この記事でわかること
この記事では、ホテルがドライヤーを選ぶ際に「ワット数」を重視する理由を解説します。
あわせて、
- ワット数が高いほど速く乾くのか
- 800W・1000W・1200W・1500Wの違い
- ホテルで採用されている代表的なドライヤー
- ワット数による電気代の違い
- ホテルの客室や施設に合うワット数の考え方
について紹介します。
単純に「ワット数が高いドライヤーほど高性能」と考えるのではなく、速乾性、宿泊体験、客室設備、施設運営のバランスから、ホテルに適したドライヤーを考えていきます。
【インデックス 】
ホテルがドライヤーを選ぶ基準は、
・価格
・性能
・耐久性
・スタッフの使いやすさ
など様々です。
その中でも、自宅用ではあまり気にしないのに、ホテルでは意外と重視される基準があります。
それが、
「ワット数」です。
なぜホテルはワット数を基準にドライヤーを選ぶのか?
例えば、ホテルでは「1500Wクラスのドライヤー」を条件にするケースがあります。
理由は、従来から1500W前後を基準としてきたことや、「十分な風量を確保したい」という考えから、条件とするケースもあります。
一方で最近は、1000W程度のドライヤーを希望するホテルも増えてきています。
客室全体の電力バランスや省エネ性を考え、必要十分な性能を求めるケースです。
ワット数が高いほど速く乾くは本当?
では、本当にワット数が高ければ高いほど性能は良いのでしょうか?
答えは、技術が進化した今、そうだとは限らないと言えます。
実際に、ホテルで採用例があり、宿泊者からも人気の高いReFa、KINUJO、Dysonなどを調べると、消費電力は1200W前後に集中しています。
つまり、ワット数が高ければ高いほど速く乾き、性能も良いとは限らないのです。
その理由を紐解いてみましょう。
理由その1:モーターの性能が進化した
ドライヤーの消費電力の多くはヒーターに使われます。一方、モーターは消費電力を大きく増やさなくても、風量や風速を高められるため、近年はモーター性能の向上によって1200W前後でも高い速乾性を実現するモデルが増えています。
理由その2:温度だけで乾かしていない
以前は「熱い風=速く乾く」という考え方が主流でした。しかし現在は、風量・風速・適切な温度を組み合わせることで、髪への負担を抑えながら効率よく乾かすことを重視するドライヤーが増えています。
理由その3:風の通り道まで設計されている
例えば
- ノズル
- 吹出口
- 吸気口
これらを工夫することで
風速を高めています。
だから
1200W前後でも
風が強く感じるのです。
理由その4:日本のコンセント事情も関係
日本の一般的なコンセントは、1口または同一回路で使用できる電力に限りがあります。
客室では、ドライヤーだけでなく、冷蔵庫、テレビ、電気ケトル、照明、空調など、さまざまな電気製品が使われます。
そのためホテルでは、ドライヤー単体の性能だけでなく、客室全体の電力バランスも考える必要があります。
だからこそメーカーは、ワット数を上げるのではなく、モーターや風の設計を工夫することで速乾性を高めてきました。
つまり現在は、「ワット数が高い=高性能」ではなく、「限られた電力をどう活かすか」がドライヤー選びのポイントになっているのです。
ホテルは何ワットを選ぶ?
(1) 持ち運びやすさや手軽さが魅力の800W
軽量性や省スペース性を重視する施設では、800Wクラスのコンパクトなドライヤーも選択肢になります。
代表例として、cadoのスティック型ヘアドライヤー「baton」があります。東京・代々木公園にあるTRUNK(HOTEL) YOYOGI PARKでは、全客室に導入されています。
※2026年7月現在の情報です。
| 項目 | スティック型 ヘアドライヤー Baton cado |
| 商品 | 楽天市場(メーカー公式)で詳細を見る |
| 導入ホテル | TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK |
| 価格 | 29,920円〜 |
| 向いている客室 | 軽量性や省スペース性、客室デザインとの調和を重視する施設 |
| 重さ | 約298g (除コード等) |
| 風量 | 約2.0㎥/分 |
電気代の目安(800Wドライヤー)
1回(5分)あたり:約2.1円
1か月あたり:約62円
1年あたり:約754円
※電気料金目安単価31円/kWh、1日1回、最大消費電力で5分間使用した場合の概算です。実際の電気代は、使用モード、使用時間、契約する電気料金プランによって異なります。
(2) 最大消費電力を抑え、設備とのバランスを取りやすい1000W
現在のドライヤー市場では、高風速モーターを搭載した1200W前後のモデルが主流となっており、1000Wのドライヤーは、実は選択肢がそれほど多くありません。
1000Wモデルは、最大消費電力を抑えやすく、軽量性やコンパクト性、客室設備とのバランスを重視した製品が中心です。
代表的なドライヤーとしては、
・LINKA スマートブロウ(1000W)
があげられます。
※2026年7月現在の情報です。
| 項目 | LINKA スマートブロウ |
| 商品 | 楽天市場(メーカー公式)で詳細を見る |
| 導入ホテル | 東横イン |
| 価格 | 8,800円〜 |
| 向いている客室 | ・客室の電力負荷を抑えたいホテル ・「高級ブランドのドライヤーまでは必要ないが、備え付け感の強い機種より少し良い体験を提供したい」というホテル |
| 重さ | 約285g (除コード等) |
| 風量 | 数値非公表※ |
※LINKA スマートブロウは、具体的な風量値を公表していませんが、独自の「スマートブロウ機構」による大風量と速乾性を特徴としています。
電気代の目安
1回(5分)あたり:約2.6円
1か月あたり:約78円
1年あたり:約943円
※電気料金目安単価31円/kWh、1日1回、最大消費電力で5分間使用した場合の概算です。実際の電気代は、使用モード、使用時間、契約する電気料金プランによって異なります。
(3)性能と宿泊体験のバランスに優れた1200W前後
現在、
- ReFa
- KINUJO
- Dyson
など、
ホテルで人気かつ採用される高級ドライヤーの多くは1200W前後です。
これは、決して「1500Wにできなかった」からではありません。むしろ、限られた電力の中で高い性能を発揮することを目指した結果です。
つまり1200W前後は、単なる妥協ではありません。
速乾性、温度制御、髪への配慮、客室設備とのバランスを考えたとき、多くの高機能ドライヤーにとって一つの現実的な最適解になっているのです。
メーカーは、
- モーター性能
- 風量
- 風速
- 温度制御
を工夫することで、1200W前後でも高い速乾性を実現しているのです。
| 項目 | ReFa BEAUTECH DRYER PRO | KINUJO Hair Dryer (KHシリーズ) | Dyson Supersonic™ ヘアドライヤー |
| 商品 | 楽天市場で詳細を見る | 楽天市場(メーカー公式)で詳細を見る | 楽天市場で詳細を見る |
| 導入ホテル | シックスセンシズ京都 三井ガーデンホテル銀座プレミアなど | ホテルオークラ福岡 シェラトン都ホテル東京など | パークハイアット東京 ホテルグレイスリー銀座など |
| 価格 | 35,800円〜 | 35,200円〜 | 39,900円〜 |
| ワット数 | 1200W | 1250W | 1200W |
| 重さ | 約740g(電源コード含む、セット用ノズル含まず) | 約348g(本体のみ) | 約720g(本体のみ) |
| 風量 | 約1.4m³/分(HIGH、COOL時)約1.0m³/分(LOW時) | 最大2.2m³/分 | 最大約2.4m³/分 |
1200W使用時の電気代の目安
1回(5分)あたり:約3.1円
1か月あたり:約93円
1年あたり:約1,132円
※電気料金目安単価31円/kWh、1日1回、最大消費電力で5分間使用した場合の概算です。実際の電気代は、使用モード、使用時間、契約する電気料金プランによって異なります。
※KINUJO Hair Dryerは1250Wのため、上記の1200Wモデルより電気代はわずかに高くなります。
(4) 従来型の大風量モデルが多い1500W
1500Wクラスには、分かりやすい大風量や速乾性を重視したモデルが見られます。
1500Wクラスはホテル全体で広く型番が公表されているわけではありませんが、温泉旅館の大浴場や、美容室向け機器を採用する宿泊施設で導入例が見られます。
ホテルでの導入例として、沖縄の宿泊施設「シークレットハウス牧志」では、クレイツ製の1500Wドライヤーが採用されています。ただし、具体的な型番は公表されていません。
電気代の目安
1回(5分)あたり:約3.9円
1か月あたり:約116円
1年あたり:約1,414円
※電気料金目安単価31円/kWh、1日1回、最大消費電力で5分間使用した場合の概算です。実際の電気代は、使用モード、使用時間、契約する電気料金プランによって異なります。
電気代について
ここでは、各ワットごとの電気代を比較してみたいと思います。
| 消費電力 | 5分あたり | 1か月 | 1年 | 1500Wとの差 |
|---|---|---|---|---|
| 800W | 約2.1円 | 約62円 | 約754円 | 約660円安い |
| 1000W | 約2.6円 | 約78円 | 約943円 | 約471円安い |
| 1200W | 約3.1円 | 約93円 | 約1,132円 | 約282円安い |
| 1500W | 約3.9円 | 約116円 | 約1,414円 | ― |
たとえば1500Wから1000Wに替えた場合、同じ5分間使用という条件なら、
- 100室:約4万7,100円/年
- 200室:約9万4,200円/年
- 500室:約23万5,500円/年
の差になります。ただし、1000Wの方が乾燥時間が長くなれば、この差は縮まります。
まとめ
500室のホテルで、1500Wから1000Wのドライヤーに変更した場合、同じ5分間使用するという条件では、年間約23万円の差が生じます。この金額を大きいと見るか、小さいと見るかは、ホテルによって異なるでしょう。
ただ、ホテルがドライヤーをワット数で選ぶのは、電気代だけを考えているからではないと思います。
800Wには軽さと取り回しやすさがあり、1000Wには客室設備とのバランスがあります。1200Wには性能と宿泊体験を両立する工夫があり、1500Wには分かりやすい大風量と速乾性があります。
ドライヤーのワット数を比べてみると、単なる消費電力の違いだけではなく、ホテルが宿泊者の体験と施設運営のどちらを、どのように両立しようとしているのかまで見えてきます。
